Greeting ごあいさつ
タスクシフト/タスクシェアを超えた本当の連携を目指して
公益社団法人 日本麻酔科学会
多職種連携委員会
委員長 廣瀬宗孝 |
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本邦における術中の麻酔管理を含む周術期管理に関わる職種は、麻酔科医を中心として外科医、歯科医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士、歯科衛生士、メディカルソーシャルワーカー、管理栄養士など多くの職種が含まれてきた経緯があります。この麻酔科医以外の職種が麻酔管理に関わる度合いは、医師過剰地域と医師不足地域で異なり、また病院機能によっても異なっていると思われます。そこで日本麻酔科学会は、これらの職種との連携を強化するために周術期管理チームや特定行為研修に関連する委員会やワーキンググループ(WG)を立ち上げて運用してきました。そして2025年度から、これらを全て一本化した「多職種連携委員会」が発足しました。単に麻酔科医の業務をタスクシフト/タスクシェアするのではなく、多職種が連携して安全で質の高い周術期管理を構築するための委員会です。
多職種連携委員会は以下の委員会とWGを統括する特別委員会です。
【周術期管理チームに関する委員会およびワーキンググループ(WG)】
周術期管理チーム委員会、周術期管理チーム認定審査委員会、周術期管理チーム試験問題作成WG、周術期管理チームテキスト作成WG、
周術期管理チームセミナーWG、術後疼痛管理研修作業部門
【臨床工学技士に関する安全管理指針WG】
【特定行為研修に関する委員会】
特定行為研修管理委員会、特定行為研修審査委員会
日本麻酔科学会に対して、「多職種が連携して術前や術後の周術期管理を行うことには積極的なのに、術中の麻酔科管理における連携には消極的である」といった印象を持つ医療者がおられるかもしれません。しかし日本麻酔科学会は、術前、術中、術後の全ての周術期管理において積極的に連携を進めています。本委員会は、術中の麻酔管理を含めて多職種が連携して周術期管理を行うことを推進し、その安全と質を向上させて、国民の健康維持に寄与することを目的に、活動を開始いたします。
2025年6月
周術期管理チームの活動モデル
周術期における認定チームへの期待
日本手術看護学会 理事長 ミルズしげ子
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応など社会情勢の変化は、周術期医療へも大きな影響を与えています。また、医療技術の進歩は、高度で低侵襲な手術も可能とし、高齢患者や多様な基礎疾患を持つ患者の手術も増加し、ますます複雑化、煩雑化していると言えます。そのため、周術期に関わる看護師には、より専門的な知識・技術を持った周術期チームの一員とした役割が求められています。さらに、2019年には働き方改革法案が施行され、医療従事者の働く環境への配慮も必要な中、より安全で質の高い手術医療を提供するためには、さらに多職種の連携を強化した周術期管理チームが重要と言えましょう。
日本手術看護学会は、周術期看護の言葉の定義を「患者、家族が手術を決定した時から、手術室へ入室し、手術の準備から術中、手術を終えて、手術室を退室し、手術侵襲から回復までのプロセスに関わる看護」としました。個々の患者に応じた看護を提供するには、麻酔や手術による身体侵襲などの影響をより的確にアセスメントする専門的知識が必要になります。周術期管理チームの資格取得は、それらの知識や技術を獲得するための一つの手段と考えられます。周術期管理チームとして、より効果的に活動することは、患者の安全で安楽な手術へと繋がり、手術準備から、術中のケア、そして術後の病棟ケアへと、より質の高い医療や看護ケアの提供ができると考えます。
周術期看護に関連する認定資格には、「手術看護認定看護師(日本看護協会)」、「手術看護実践指導看護師(日本手術看護学会)」、「周術期管理チーム看護師(日本麻酔科学会)」、また2015年から推進されている「特定行為研修修了看護師」、さらに「高度麻酔看護師・麻酔診療看護師(NP)」など多くの資格を持つ看護師が、周術期領域で活躍していく時代となりつつあります。それぞれの有資格者が周術期領域で活躍する意義は、患者にとって有益であり、かつ周術期に関わる医療従事者に見出していただくことが必要です。周術期管理チーム看護師の皆さんには、修得した専門的な知識や技術を日々の看護に反映させ、手術を受ける患者・家族の安全・安心へと貢献していただき、さらにチームの優れた調整役として活躍されることを期待します。
2021年5月
周術期管理チームにおける臨床工学技士の認定制度について
公益社団法人日本臨床工学技士会 理事長 本間 崇
日本臨床工学技士会が『周術期管理チームテキスト第 2 版・第 3 版』の作成に参加してから5 年が経過し、今年度いよいよ「周術期管理チーム臨床工学技士」の認定試験が開始されることになりました。今回の臨床工学技士の認定試験作成では東邦大学の落合先生、群馬大学の齋藤先生をはじめとした多くの日本麻酔科学会の先生方や日本手術看護学会の方々にご協力いただいたと伺っております。ここに改めて関係の皆様に御礼を申し上げます。
臨床工学技士が「周術期管理チーム」へ参加させていただいた最大の理由は、より高度で専門的になった周術期領域での医療機器に関して、医療機器の専門職の立場 から麻酔科医師の質的・量的不足を補うことです。さらに、臨床現場の過酷な労働条件の改善や国民へのより安全な周術期医療の提供に臨床工学技士が直接かかわることも目的としています。
こうした目的の達成には、臨床工学技士が周術期管理チームの「共通言語」を修得することが必要となるため「周術期管理チーム臨床工学技士」を養成することが不可欠となりました。
また、一昨年の診療報酬改訂では「24 時間臨床工学技士の院内配置」が特定集中治療室の加算要件となりました。こうした具体的なインセンティブを獲得することにより、周術期医療や集中治療領域における臨床工学技士の役割が大きくクローズアップされつつあります。
「周術期管理チーム認定試験」の受験者数はまだまだ少ない状況ではありますが、「周術期管理チーム」の目標の一つである診療報酬制度における「チーム医療・周術期管理チーム加算〔案〕」獲得が達成された折には社会的な認知度も更に大きくなり、周術期管理チーム臨床工学技士の参画が大きく拡大すると考えられます。
「チーム医療・周術期管理チーム加算〔案〕」が一日でも早く実現がきるように、日本臨床工学技士会としても「周術期管理チーム臨床工学技士」養成の支援体制を取り、周術期の現場に少しでも多くの「周術期管理チーム臨床工学技士」が配置できるよう、組織として協力してまいります。今後この「周術期管理チーム認定制度」が益々発展することを祈念申し上げ、ご挨拶の言葉といたします。
2017年8月